真言宗の葬儀とは?流れや作法、使う道具などを紹介

お葬式は宗派によって儀式や作法が異なります。お葬式を執り行う際にはその宗派について理解し、"しきたり"を重んじることが重要です。今回は、日本の代表的な仏教宗派のひとつである、真言宗(しんごんしゅう)のお葬式について、流れや使われる道具、作法やマナー、費用の相場などを詳しく解説します。

真言宗とは

真言宗は、平安時代初期の僧である「弘法大師(こうぼうだいし)/空海」が、中国で学んだ"密教"を日本に伝え、広めた宗教です。

現在では18の総大本山を有し、国内の仏教宗派としては3番目に信者が多い宗派となっています。

「真言」とは"仏の言葉"を意味し、お経によって説かれた仏の言葉こそが真理であるとする思想です。太陽を象徴する大日如来(だいにちにょらい)が宇宙の源(みなもと)であり、諸仏の起源は大日如来であると考えられています。

「大日経(だいにちきょう)」や「金剛頂経(こんごうちょうきょう)」を拠り所とし、それらを元に描かれた「曼荼羅(まんだら)」は宇宙の森羅万象を描き出したものとして、密教の思想を象徴しています。

真言宗の葬儀

真言宗のお葬式は、大日如来の支配する「密厳浄土」へ故人を送り届けるための儀式となります。誰でも仏と同じように行動し心を清く保つことで、永い時間(とき)を要せずに仏になれるという「即身成仏」の考えに則った儀式が行われるのが特徴です。

「般若理趣経(はんにゃりしゅきょう)」「般若心経(はんにゃしんぎょう)」「観音経(かんのんきょう)」などのお経や「光明真言」などが唱えられ、大日如来を賛嘆するものとして経文に節をつけて唱える「声明(しょうみょう)」も特徴として挙げられます。

真言宗の葬儀の流れ

真言宗には、古義真言宗12派・新義真言宗3派・真言律宗1派の計16宗派があります。お葬式で行われる儀式や作法などはそれぞれの宗派によって多少の違いがありますが、ここでは一般的な真言宗のお葬式の流れをご紹介します。

儀式の流れは大きく分けて次の5つです。

  1. 今世で身についた悪い考えや習慣などの穢れを祓い清める
  2. 大日如来や諸仏を迎え入れる
  3. 故人が仏の弟子として仏門に入る
  4. 仏の教えを伝授し、故人の即身成仏を促す
  5. 故人の往生を願い、浄土へと送る

それぞれの流れを詳しく見ていきましょう。

祈祷した土砂を遺体にかける「土砂加持(どしゃかじ)」は密教特有の儀式の一つで、納棺の際に行われます。

また、近年では「破地獄」の儀式を省略することもあるようです。

真言宗で使う道具

真言宗のお葬式では、さまざまな道具が使われます。数々の道具には真言宗以外の宗派でも広く使用されるものから、密教ならではの「密教法具(みっきょうほうぐ)」と呼ばれる独特なものまで多彩です。

ここでは代表的な8つの道具をご紹介しますので、道具を通じて仏教儀式の意味を感じてみましょう。

木魚

「木魚(もくぎょ)」は、魚の鱗の模様が彫刻された木製の仏具で、中がくり抜かれ丸い形をしています。

小さなクッションのような専用の布団の上に置き、先端に皮や布を巻いた棓(ほう)で叩いて音を出す梵音具(ぼんのんぐ)のひとつです。

読経を行う際に打ち鳴らしてリズムを取り、精神を統一するために必要とされていています。真言宗以外では、天台、浄土宗、禅宗などでも用いられ、仏式のお葬式といえば僧侶の読経と木魚のポクポクという音が象徴的ですので、ご存じの方も多いでしょう。

鉦吾

「鉦吾(しょうご)」は、金属でできた皿状の仏具で、いわゆる鳴り物のひとつです。畳の上に置き、撞木(しゅもく)という丁字型の棒で叩くと、カンカンという乾いた甲高い音がします。読経や念仏、御詠歌を謳いあげるときに打ち鳴らし、リズムを取り、拍子を合わせるために使われる道具です。真言宗以外では、天台宗、浄土宗などでも使用されます。

妙鉢

「妙鉢(みょうはち/みょうばち)」は、シンバルのような形をした金属製の仏具で、ジャラーンと響くその音によって邪気を祓い清めるともされています。

お葬式では、さまざまな仏を迎え、また極楽浄土にお送りするために鳴らされます。真言宗では主に「声明(しょうみょう)」を唱える際に使用されることが多いようです。

真言宗以外では、臨済宗や曹洞宗などでも使用されます。

内敷

「内敷(うちしき)」は、仏壇に飾る荘厳具(しょうごんぐ)の一種で、錦や金襴でできたきらびやかな布です。

仏壇や祭壇を装飾するために使用され、盆や彼岸、法事や命日など、特別な日にも内敷を敷いて華やかにします。真言宗、天台宗、浄土宗、禅宗、日蓮宗では四角い内敷を使用しますが、浄土真宗では三角形のものを用いることが一般的です。

火立

「火立(ひたて)」は、ロウソクを立てて火を灯すための仏具です。いわばロウソク立てですね。真言宗では、香り・花・灯り・水・食べ物の5つをお供えものの基本とし"五供(ごくう)"と言います。ロウソクの灯りは重要なお供え物のひとつですので欠かすことができません。火立の形や様式は宗派や地域の慣習によって異なることがありますので、仏具店などで購入する際にはよく確認して、真言宗の様式に合ったものを選ぶようにしましょう。

花立

「花立(はなたて)」は、前述した五供のひとつである"花"をお供えするための花瓶のことです。花瓶と言っても仏壇仏具店などで販売されている仏具のひとつとなります。

素材やデザインなどは多様で、浄土真宗本願寺派は黒の具足、大谷派は金の具足が使われるなど、宗派や地域の慣習に合ったものを選ぶ必要がありますが、真言宗では金色以外のものを選べば大丈夫です。サイズやデザインなどは仏壇に合わせて選ぶと良いでしょう。

香炉

「香炉(こうろ)」は、香を焚くための仏具です。火立・花立・香炉は「三具足(みつぐそく)」と呼ばれ、お葬式や故人の供養には欠かせないアイテムとなっています。

五供のひとつである"香り"をお供えする目的で使用されますが、香は人々の心身や場を浄化するとも考えられていて、素材には真鍮や陶器が多い傾向にありましたが、現代では木製の塗りや樹脂製のものも見られているようです。伝統的な形のものからモダンなデザインのものまで多種多様な香炉ですが、やはり宗派や地域の慣習によって決められている場合もありますので、選ぶ際には親族やお寺に確認してください。

 

仏飯器

「仏飯器(ぶっぱんき)」は、五供のひとつである"食べ物"をお供えするための食器です。丸みを帯びた小さな器に高い脚が付いていて、そこに炊いたご飯を盛り付けお供えします。

ご飯以外にもお菓子や果物を供えるための高坏(たかつき)という道具もあり、仏飯器と同様に高い脚が特徴です。脚が高いのは仏を敬う心の表われと言われています。

お供えとしての食べ物は、盛り方にも宗派や地域の慣習によって違いがありますので、必ず真言宗での決まりを確認することをおすすめします。

茶湯器

「茶湯器(ちゃとうき/さとうき)」は、お茶や水をお供えするための道具です。湯飲みをそのまま小さくしたような形で、さまざまなデザインがあります。材質も木製のものから陶器やガラス、銅や真鍮、ステンレスなどの金属製まで多様です。

また、宗派の紋を入れる場合があり、異なる宗派の紋が入っていてはいけないので、仏飯器や茶湯器を購入する際には注意してください。

真言宗の葬儀の作法

お葬式での作法は、宗派によって細かな部分に違いが見られます。ここでは「焼香」「線香」「数珠」について、真言宗のお葬式に参列する際に知っておきたい作法のポイントをご紹介します。

焼香の仕方や数珠は、自身の宗派の形式でもマナー違反ではありませんが、執り行われる葬儀の宗派に合わせるとより丁寧な印象になりますので、真言宗の基本も押さえておきましょう。

焼香

真言宗では「3」という数字に特別な意味があるとして、焼香は「額に押し頂いてから香炉にくべる動作を、3回行う」というのが正式です。

流れは以下のとおりです。

  1. 順番が来たら祭壇の前に進み出て、僧侶、遺族の順に一礼します
  2. 焼香台の前まで進んで、遺影に向かって合掌し、一礼します
  3. 親指・人差し指・中指の3本で抹香をつまみ、額に押し頂き、香炉にくべます

 これを3回繰り返します

遺影に合掌して、一礼します

僧侶、遺族の順に一礼して、席に戻ります

ただし、宗派やお寺によっては、最初の1回だけ額に押し頂き、2回目3回目は押し頂かずに香炉にくべる方法で行う場合もあります。参列する際には周りの人の仕方に倣って行うと無難です。

線香

線香は、通夜のときや法事などで手向ける機会がありますので、真言宗での手向け方も覚えておきましょう。

線香についても、「3」という数字を大切にすることから3本が基本です。ただし、大勢が手向けると香炉がいっぱいになってしまうため、数人以上で線香を上げる場合は1本づつで行う場合もあります。

やり方は以下のような要領です。

《一人が代表として手向ける場合》

  1. 右手で、線香3本を取ります
  2. ロウソクの火で線香に火を点け、線香に点いた火は左手で扇いで消します
  3. 火の点いた線香は、1本は香炉の奥に、そして左手前に1本、右手前に1本を、正三角形のかたちになるように立てます

《数人以上が手向ける場合》

1.右手で、線香1本を取ります

2.ロウソクの火で線香に火を点け、線香に点いた火は左手で扇いで消します

3.最初の人は火の点いた線香を香炉の左奥に立てます

(次に線香を手向ける人たちも、順に奥のほうから線香を立てていくと良いでしょう)

数珠

真言宗で使用される正式な数珠は「振り分け数珠」と呼ばれ、主玉108個、親玉2個、四天玉4個と、親玉の先には浄名玉1個、弟子玉がそれぞれ10個ずつ、そして露玉が2個づつが付いており、先端には梵天房がそれぞれ2個ずつとなっています。

男性用と女性用では、造りは同じですが玉の大きさに違いがあり、標準的なサイズは男性用が約36cm、女性用は約24cmであることが一般的です。

真言宗の葬儀に参列するときのマナー

お葬式では特に「香典」と「服装」のマナーは重要です。間違っていると遺族や親族、参列者に不快な思いをさせてしまいかねませんので、細部にも気を配って準備しましょう。

これらに関しては真言宗で決められている特別なことはありませんので、一般的なお葬式でのマナーを守れば大丈夫です。

香典

まず、香典に包む金額ですが、喪家や故人との関係によって異なります。友人や仕事の関係者は5,000〜10,000円程度、身内であれば30,000〜100,000円程度といった相場がありますので、関係性を考慮して決めましょう。

香典に使用する紙幣は、新札ではなく旧札を包むのがマナーです。きれいな旧札がない場合には、新札に軽く折り目をつけて入れても問題ありません。

不祝儀袋は包む金額に見合ったものを選び、紙幣の向きを揃えて入れます。

表書きは宗派によって気をつけなければいけません。真言宗の場合は「御霊前」と書くのが一般的ですが、「御仏前」でも構いません。

持参する際は必ず袱紗で包むことを忘れないようにしましょう。袱紗は紫やグレーなどで地味な色柄のものを選ぶようにしてください。

服装

お葬式に着用する喪服には「正喪服」「準喪服」「略喪服」があり、故人の遺族が着用するのは第一礼装である「正喪服」になります。

一般会葬者として参列する場合は「準喪服」が適切です。準喪服とは、ブラックフォーマルなどの礼服を言い、女性の場合は黒のアンサンブルやワンピースなどのフォーマルドレスになります。

通夜に参列する場合は、「略喪服」でも構いません。略喪服とは黒のビジネススーツ、濃紺や濃いグレーのダークスーツ、女性のパンツスーツもこれにあたります。

喪服に合わせるカバンや靴などの小物は黒で、デザインがシンプルで光沢のないものを選んでください。

結婚指輪以外のアクセサリーはつけないことが基本で、髪留めやハンカチ、ネクタイや靴下、ストッキングなども黒で揃えることがマナーです。

真言宗葬儀の費用相場

お葬式にかかる費用についても触れておきましょう。

『一般葬』の全国平均を項目別に見ると、棺・搬送費・火葬場利用料・斎場使用料・祭壇などの「基本料金」が約70万円、通夜振る舞いや精進落としの「飲食費」が約20万円、「返礼品」が約20万円となっています。

ただし、斎場使用料や祭壇、飲食費や返礼品は、参列者の数によって変動します。

そして、真言宗での戒名はランクによって異なり30万〜100万円以上、お布施は読経料・御車料・お膳料などを含めて20万〜60万円くらいと考えて良いでしょう。

お布施は、お寺の格やお葬式に来てもらう僧侶の人数によって違ってきますので、いくら渡すかはお寺や親族と相談して決めることをおすすめします。

真言宗の葬儀に対応してくれる葬儀社を紹介

最後に、真言宗のお葬式に対応してくれる代表的な8つの葬儀社について、それぞれの特徴や対応状況をまとめてご紹介します。

文化庁が平成9年に行った宗教法人の調査によると、真言宗の信徒数は1,221万人で、日本の仏教宗派としては3番目に多い数となっています。

そのため、真言宗でお葬式を行う機会は比較的多いと考えられますが、すべての葬儀社が真言宗のお葬式に慣れているとは限りませんので、葬儀社を決める際には、真言宗のお葬式にしっかり対応してくれるかどうかを必ず確認しましょう。

雅葬会

引用:雅葬会の公式サイト

「雅葬会(みやびそうかい)」は、神奈川・東京23区・多摩地域に特化した地域密着の葬儀専門会社です。地域の関連業者と連携することで、使用する花や祭壇、食事や返礼品は高品質でありながら低価格を実現しています。

一級葬祭ディレクターが在籍しており、自社社員が相談から葬儀の施行・アフターサービスまで一貫したサポートを行うため、きめ細やかで丁寧な対応が特徴です。

実績と経験を活かして仏教の全宗派に対応できるので、真言宗のお葬式も安心して任せることができます。

小さなお葬式

引用:小さなお葬式の公式サイト

「小さなお葬式」は、小規模な家族葬に特化した全国対応の葬儀仲介会社です。お葬式の施行など現場の対応は紹介先の葬儀社が行うため、対応の善し悪しは担当する葬儀社によってややバラつきがあるようです。

葬儀費用は全国一律で分かりやすくなっていますが、お布施などは地域のお寺によって異なるので確認が必要になります。

全宗教・宗派に対応できるとしていますが、真言宗に対応できるかは契約前にしっかりと確認しましょう。

東京葬儀

引用:東京葬儀の公式サイト

「東京葬儀」は、東京を中心としたエリアに対応している葬儀専門会社です。お葬式は一日に一家族限定で行われ、希望する演出を葬儀プランナーが個別に行うなど、きめ細かなサービスや対応が評判の葬儀会社になります。

料金はあらかじめ最大でかかる金額を提示してくれるため、追加料金の心配がありません。

全宗教・宗派に対応しているため希望する宗派で行うこともでき、故人らしさを演出した個性的なお葬式にすることも可能となっています。

よりそうお葬式

引用:よりそうお葬式の公式サイト

「よりそうお葬式」は、必要最低限のものだけを揃えた小規模葬儀に特化している葬儀仲介会社です。実際にお葬式を執り行うのは紹介先の葬儀社となりますが、格安である割にはサービスの質に悪い評判は少ないようです。

事前の資料請求や会員制度で費用の割引が適用され、最低限のお葬式で費用を抑えたい人に適しています。

全宗教・宗派に対応しているとしていますが、真言宗のお葬式に対応できるかどうかは最初にしっかりと確認してください。

やさしいお葬式

引用:やさしいお葬式の公式サイト

「やさしいお葬式」は、全国のお葬式に対応している葬儀仲介会社です。不要なコストを排除したセットプランを提供しているのが特徴で、必要最低限の簡素なお葬式をしたい人に人気があります。

仏式の各宗派に対応しており、希望すれば真言宗のお葬式を行うことも可能です。ただし、葬儀費用は比較的安く抑えることができますが、お布施などの宗教関連費用を別途お寺に渡す必要があることを忘れないでください。

イオンのお葬式

引用:イオンのお葬式の公式サイト

「イオンのお葬式」は、流通大手イオンの子会社イオンライフが運営する葬儀仲介会社です。受注後の対応やお葬式の施行は全国600社の特約店に委託しています。

メッセージカードの無料配送など独自のサービスも行っていますが、大手であるがゆえにマニュアル対応で、きめ細かな対応は期待できないとの声もあります。料金は業界最安値とは言えないのが現状です。仏式の各宗派にに対応しており、真言宗でのお葬式を執り行うこともできます。

日比谷花壇のお葬式

引用:日比谷花壇のお葬式の公式サイト

「日比谷花壇のお葬式」は、花卉小売業を手がけている日比谷花壇が葬儀事業を行っています。小規模なお葬式から大規模なお別れ会までさまざまなスタイルのお葬式に幅広く対応できるのが特徴で、20以上のプランがある花祭壇には定評があります。

ただし、サービスや取り扱っている品物が高品質であるため、費用を抑えたい人には向いていないでしょう。

各宗教・各宗派に対応しているので、真言宗でお葬式を行うことも可能です。

葬儀会館ティア

引用:葬儀会館ティアの公式サイト

「葬儀会館ティア」は、独自の教育プログラムによる"人財"育成を行っており、サービス品質に定評がある葬儀専門会社です。

東海地域や、大阪圏・東京圏で展開していますが、エリア内でも市町村によっては対応していない地域もあるため、希望する地域でお葬式を行えるかどうかは問い合わせが必要になります。

各宗旨・宗派の宗教者を紹介することができるとしていますので、真言宗でのお葬式を希望する場合は対応できるか確認してみましょう。

葬儀のお悩みは「雅葬会」へご相談ください

今回は、『真言宗』のお葬式について解説しました。真言宗のお葬式は大日如来の支配する「密厳浄土」へ故人を送り届けるための儀式で、故人の穢れを祓い清める「土砂加持」や「灌頂」といった儀式が特徴的です。

お葬式の決まりごとは難しく思えますが、密教ならではの儀式や作法に込められた意味を感じながら、故人の往生を願うことが大切です。

代表的な葬儀社8社でご紹介した「雅葬会」は地域密着で、地元のお寺や地域の慣習を熟知していますので、真言宗のお葬式についてもぜひご相談ください。

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