臨済宗のお葬式では鳴り物を使用するため賑やかな印象があり、「引導を渡す」などの慣用句の語源になっている儀式があるなど、とても特徴的です。この記事では、葬儀の流れ、焼香の作法や服装などのマナー、お布施についても詳しく解説し、後半では臨済宗の葬儀に対応してくれる葬儀社8社をご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
臨済宗とは
臨済宗は、曹洞宗(そうとうしゅう)・黄檗宗(おうばくしゅう)と並ぶ日本の三禅宗のひとつです。唐の時代の臨済儀玄(りんざい ぎげん)を宗祖とし、鎌倉時代の僧である明菴栄西(みょうあん えいさい)が禅宗の振興に務め、江戸時代に白隠慧鶴(はくいん えかく)が日本臨済宗として広めたとされています。
浄土宗が念仏を唱えるだけで浄土に導かれるという「他力」の思想であるのに対して、臨済宗は座禅や禅問答によって自ら深く考え抜き「自力」で悟りに近づくという教義が特徴です。
特定の本尊や経典はなく、「釈迦牟尼仏(しゃかむにぶつ)」や「観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)」をお祀りし、「般若心経(はんにゃしんぎょう)」や「観音経(かんのんきょう)」などが読まれます。
臨済宗の葬儀の流れ
臨済宗のお葬式は以下のような流れで行われます。
臨済宗の葬儀の特徴
臨済宗のお葬式は、大きく分けて「仏門に入る儀式」「故人をあの世へと導く儀式」、そして「故人の魂を浄土へと送り出す儀式」の三部構成になっています。
また、楽器のような「鳴り物」を使用したり、道具を用いて大きな動作を行ったりするなど、他の宗派にはあまりない数々の儀式が特徴的です。以下にて、具体的に見ていきましょう。
「授戒」「念誦」「引導」3つの儀式がある
導師や式衆と呼ばれる僧侶たちが入場すると、まず故人が仏門に入る儀式から始まります。これを「授戒」と言い、「剃髪」「懺悔文」「三帰戒文」「三聚浄戒」「十重禁戒」の儀式が順に行われます。
そして、仏の弟子になった証である「血脈」が授けられ、故人は仏門に入ったと認められるのです。
続いて行われるのは、故人をあの世に導くための「念誦」です。ここでは読経とともに「入龕諷経」「龕前念誦」「起龕念誦」「山頭念誦」といった納棺や出棺などの儀式を行い、故人が迷いなく往生することを促していきます。
そして最後に、「引導」によって故人の魂を浄土へと送り出していきます。
さまざまなお経を読む
本来、臨済宗では座禅や禅問答によって悟りに近づくことを重視しているため、念仏を繰り返し唱え続けることはしません。ですが、読経をする場面では「開経偈」「般若心経」「観音経」「大悲呪」「座禅和讃」などが多く読まれます。
お葬式では「剃髪の偈」から始まり、「授戒」では「懺悔文」や「三帰戒文」、「念誦」では「大悲呪」や「回向文」「十仏名」「往生咒」などを唱えます。さらに「引導」では「引導法語」が唱えられ、焼香を行う際には「観音経」や「大悲心陀羅尼」「楞厳呪」など、さまざまなお経が読まれることも興味深いところです。
松明に見立てたものを投げる
葬儀の後半に行われる「引導」では、「引導法語」が唱えられる前に、松明(たいまつ)に見立てたものを、円を描くように回して空中に投げます。
これは、この世とのつながりを断ち安らかに成仏してほしいという意味で行うようになったと言われており、一見、曲芸のようにも見える動作ですが、故人を仏道へと導くための重要な行為なのです。
松明の火は魔除けの効果や煩悩を消し去る効果を有しているとも言われ、昔は本物の松明を使用していましたが、現在では安全を考慮して松明に見立てたものを使用するようになっています。
僧侶が一喝する
また同じく「引導」を行う中で、お経を読んでいる僧侶が「喝!」と叫びます。これも大きな特徴の一つで、故人の迷いや現世への未練を断ち切り、仏の道へ進ませるという意味が込められています。
「引導を渡す」という慣用句はこれが語源となっており、未練を断ち切るという意味合いから転じて、現在では最終宣告をしてあきらめさせることを意味するようになっています。
なお、「喝を入れる」という慣用句も浸透しつつあるようですが、元来は「活を入れる」が正しく、この喝から来ているものではないということですので、正しく理解しておきましょう。
シンバルのような楽器や太鼓を使う
臨済宗のお葬式では、鳴り物を使用することも大きな特徴です。
鳴り物には、引磬(いんきん)と呼ばれるおりんや、懺法太鼓(せんぼうだいこ)、そしてシンバルのような形をした妙鉢(みょうはち)/鐃祓(にょうはち)などを用い、「チーン」「ドーン」「ジャラーン」と響き渡らせる光景は荘厳さを感じさせます。
これは、昔、棺を担いで行く道中に「葬儀の列が通りますよ」と周囲に知らせるためであったとか、邪気や魔を祓うためであった、または、お釈迦様がなくなったときに行った音楽供養を表現したものとも言われています。
臨済宗の葬儀の作法とは
ここからは、臨済宗のお葬式に参列する場合の基本的なマナーについてご紹介します。特に気をつけるべき点は、宗派によって細かな違いがあり誰もが戸惑いやすい「焼香」の作法と「線香」、そしてお葬式の必須アイテムである「数珠」についてです。
焼香の仕方や数珠はご自身の宗派の形式でもマナー違反ではありませんが、葬儀を執り行う側の宗派に合わせるとより丁寧ですので、基本を押さえておきましょう。
焼香
臨済宗の焼香の仕方は以下の手順になります。
1.順番が来たら前に進み出て、合掌し礼拝する
2.右手の親指と人差し指と中指の3本で抹香をつまみ、押し頂かず、香炉に入れる
3.合掌して礼拝し、元の場所に戻る
このように、臨済宗のお葬式で行う焼香は、抹香を額の高さまで押し頂かず、香炉に落とす動作を1回行うのが基本です。
ただし、お寺や地域の慣習によっては押し頂く場合や、回数も2回3回と行うこともありますので、周りの人などに事前に確認しておくことをおすすめします。
線香
お葬式で線香をあげることは多くありませんが、お墓や仏壇にお参りすることもありますので、線香のあげ方についても触れておきます。
臨済宗では、お線香は1本で、立てるのが基本です。右手で線香を取り、左手を軽く添えながらロウソクの火を線香に移します。線香の火は左手であおいで消します。息を吹きかけて消してはいけません。
宗派や地域の慣習によっては線香を寝かせて置く場合があったり、本数が異なったりしますので、事前に確認をして、なるべく習わしに合わせて行うようにしましょう。
数珠
数珠も、宗派によってデザインや持ち方が決められています。臨済宗の正式な数珠は、108個の主玉に、親玉が1個、親玉の対角線上に向玉が1個、天玉4個、ボサが1個、そして男性用には紐房が、女性用には頭付房が付いているものとなります。
手に持つ際は、一重の大きな輪をひとひねりし二重の状態にして、房を垂らすように左手に持つのが基本です。
お葬式や法事に参列する場合、ご自身が臨済宗であれば臨済宗の本式数珠を持つことが望ましいですが、他の宗派である場合はお手持ちの数珠を使用しても構いません。
臨済宗のお布施
お寺に渡すお布施は、幾らくらいの金額を包んで、どのタイミングで渡せば良いのか、特に初めてのときには見当もつかないものです。
ここでは臨済宗のお葬式でお布施が必要になる場面での一般的な金額と、渡し方のマナーをご紹介します。ただし、臨済宗は、建仁寺派、東福寺派、建長寺派など15の宗派で相場が異なるとされていますので、注意が必要になります。
読経料・お車料・お膳料
まず、お布施として渡すのは、通夜と葬儀での「読経料」「お車料」「お膳料」です。
導師1人と副導師1人で、枕経、通夜、葬儀と同日に初七日法要まで行った場合の相場は下の表のようになっています。
読経料 | お車料 | お膳料 | 合 計 | |
枕 経 | 1〜2万円 | 5千~1万円 | ー | 1.5万~3万円 |
通 夜 | 2〜3万円 | 5千~1万円 | 5千~2万円 | 3万~5万円 |
導 師 | 15〜50万円 | 5千~1万円 | 5千~2万円 | 16万~53万円 |
副導師 | 10〜20万円 | 5千~1万円 | 5千~2万円 | 11万~23万円 |
初七日 | 2〜3万円 | 5千~1万円 | ー | 2.5万~4万円 |
34万~88万円 |
単純に計算すると総費用として34万〜88万円となりますが、このように幅があるのは地域性やお寺の格によっても金額が異なるからです。
お車代は、遠くから来ていただく場合にはさらに上乗せするなど考慮する必要があります。
またお膳料は、通夜振る舞いや精進落としのお食事を提供することが一般的でしたが、現代では僧侶が辞退されることも多いので、料理の代わりにご膳料を渡すことが多くなっています。
いずれにしても、お布施の金額はその時の状況によって判断する必要がありますので、必ず親族やお寺に確認をして決めたほうが良いでしょう。
戒名
また、「戒名」を授かった場合には戒名料が必要になります。戒名は本来、生前に仏教徒になった証として授与される名前ですが、現在では亡くなってお葬式を行う際にお願いして授かることがほとんどです。
臨済宗では「戒名」のあとに、年齢や性別、信仰心の篤さなどによって「位号」が付けられ、その位号によって以下のように金額が異なります。
- 「△△◇◇信士(信女)」30~50万円
- 「△△◇◇居士(大姉)」50~80万円
- 「〇〇院△△◇◇居士(〇〇院△△◇◇大姉)」100万円以上
戒名料は通夜や葬儀のお布施とは分けて、別の封筒に入れて渡すことが一般的です。
渡し方
お布施は、「僧侶が会場に到着してお迎えするときに渡す」という方も多いのですが、開始前に渡してしまうと儀式の邪魔になるので、どちらかといえば「葬儀が終了し僧侶がお帰りになるときに」挨拶を兼ねて渡すほうが良いでしょう。
お布施を渡す際には、手渡しや床に置いて差し出すのはマナー違反です。最も丁寧なのは「切手盆」や「祝儀盆」「お布施盆」に乗せて差し出す方法ですが、そのような専用の盆がない場合は普通のお盆を代用しても構いません。
もし、どのようなお盆もない場合には、お布施を入れた封筒を袱紗に包み、渡す際に袱紗を開いて差し出しましょう。
お布施を渡すタイミングはお寺で決められていることもあるので、そのお寺での葬儀に慣れている親族や葬儀社などにあらかじめ確認しておくと安心です。
臨済宗の葬儀に参列するときのマナー
参列する際のマナーも確認しておきましょう。焼香の仕方や数珠に関しては前述したとおりで、それ以外に「香典」と「服装」についてご紹介します。
香典と服装に関しては臨済宗において独自の決まりがあるわけではありませんので、一般的なお葬式のマナーに沿って準備すれば大丈夫です。
大切なポイントは、お葬式はフォーマルな場であるという意識で、遺族や故人に対して失礼がないように、きちんとした印象を心がけることです。
香典
香典は表書きに注意しましょう。忌明け前は「御霊前」、忌明け後は「御仏前」と書きます。
臨済宗を含めたほとんどの宗派では四十九日法要で忌明けとなりますので、通夜、葬儀、告別式、初七日法要、初盆、彼岸などでも、四十九日の忌明け前であれば表書きは「御霊前」です。
封筒は、白無地またはハスの花や葉が描かれているものが仏教用です。黒白や双銀で結び切りの水引が付いた不祝儀用を選びます。
中袋には、金額と送り主の住所・氏名を忘れずに書いてください。金額は「参萬円」のように旧字体で書き入れます。
香典には新札ではなく旧札を使用するのがマナーです。旧札でもきれいな状態のものを選び、きれいな旧札がない場合は新札に軽く折り目を付ける方法でも構いません。そして、お札の向きを揃えて入れましょう。
服装
お葬式に参列する場合には喪服を着用します。お葬式を主催する遺族は第一礼装である「正喪服」、一般会葬者は「準喪服」が適切です。
準喪服とは、ブラックフォーマルなどの「礼服」で、女性の場合は黒のアンサンブルやワンピースといった「フォーマルドレス」になります。
通夜に参列する際は「略喪服」でも構いません。略喪服とは、黒のビジネススーツ、濃紺や濃いグレーのダークスーツです。女性のパンツスーツもこれに含まれます。
また、喪服に合わせるバッグや靴、ネクタイやハンカチなどの小物はすべて黒で、光沢や艶がなく、無地でシンプルなデザインのものを選ぶことがマナーですので、合わせて覚えておいてください。
臨済宗の葬儀に対応してくれる葬儀社を紹介
最後に、臨済宗のお葬式に対応してくれる代表的な葬儀社8社をご紹介します。それぞれの葬儀社の特徴や対応状況をまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
臨済宗は日本仏教のなかでの割合が5%ほどということもあり、臨済宗で執り行うお葬式の件数もそう多くはありません。そのように珍しい臨済宗でのお葬式を行う場合は、どのようなお葬式にも慣れた葬儀社を慎重に選ぶことが重要です。
雅葬会
引用:雅葬会
「雅葬会(みやびそうかい)」は、神奈川県・東京23区・多摩地域に特化した葬儀専門会社です。自社社員が一貫してサポートを行い、相談から葬儀の実施、アフターフォローまで、きめ細かで丁寧な対応が特徴です。
使用する花や祭壇、遺影、食事や返礼品などの質にはこだわりが感じられ、地域の関連業者と連携することで高品質・低価格を実現しています。
全宗教・宗派に対応でき、臨済宗のお葬式を執り行うことも可能となっています。
小さなお葬式
引用:小さなお葬式公式サイト
「小さなお葬式」は、小規模でシンプルなお葬式に特化した葬儀仲介会社です。全国対応で、希望する地域の中から提携している葬儀社を紹介する形態となっています。お葬式の施行や現場の対応は地元の葬儀社に委託されるため、対応の善し悪しは紹介先の葬儀社によってややバラつきがあるようです。
全宗教・宗派に対応していて葬儀費用は全国一律の料金設定となっていますが、お布施など宗教関連費用は別途宗教者に渡す必要があり、宗派によって金額が異なりますので注意が必要です。
東京葬儀
引用:東京葬儀公式サイト
「東京葬儀」は、東京を中心としたエリアに対応している葬儀専門会社です。仲介ではなく自社社員がお葬式の施行を担当するため、サービスや対応にムラがないのが特徴です。
お葬式は一日に一家族限定で行われ、希望する演出を葬儀プランナーが個別にしてくれるなど対応が細やかで丁寧なので、故人らしさを演出した個性的なお葬式をしたい人には高い満足度が期待できます。
全宗教・宗派に対応しているので、希望する宗教・宗派で執り行うことが可能です。
よりそうお葬式
引用:よりそうお葬式公式サイト
「よりそうお葬式」は、お葬式に必要なものだけを揃えた小規模葬儀に特化していて、全国対応の葬儀仲介会社です。必要最低限のお葬式を検討していて葬儀費用を抑えたい人に適しています。
仲介会社であるため、実際にお葬式を執り行う葬儀社によっては対応に多少のバラつきはありますが、格安である割にはサービスの質に悪い評判は少ないようです。
全宗教・宗派に対応していて、小規模でも臨済宗のお葬式ができます。
やさしいお葬式
引用:やさしいお葬式公式サイト
「やさしいお葬式」は、全国のお葬式に対応している葬儀仲介会社です。不要なコストを排除した適正価格でのセットプランを提供しているのが特徴で、必要最低限の簡素なお葬式を行いたい人に選ばれています。
仲介であるため実際の対応は紹介先の葬儀社になり、葬儀社を選ぶことや変更することはできません。
仏式・キリスト教の各宗派、神式・友人葬(創価学会)にも対応しているので、希望すれば臨済宗のお葬式を行うことも可能ですが、僧侶の人数によってはお布施などの費用が高くなります。
イオンのお葬式
引用:イオンのお葬式公式サイト
「イオンのお葬式」は、大手流通イオンの子会社であるイオンライフが運営している葬儀仲介会社です。自らは集客と受注に特化し、注文後の対応やお葬式の施行は全国600社の特約店に委託しています。
オリジナル会葬礼状や挨拶状メッセージカードなどの独自のサービスも行っています。
全宗教・無宗教・仏式の各宗派にも対応しており、臨済宗でお葬式を執り行うことも可能です。
日比谷花壇のお葬式
「日比谷花壇のお葬式」は、花卉小売業を手がけている「日比谷花壇」が葬儀事業を行っています。花祭壇だけでも20以上のプランがあり、花に思い入れがある人には最適です。
ただし、サービスや取り扱っている品物が高品質なため、費用を抑えたいという人には向いていないでしょう。
小規模なお葬式から大規模なお別れ会まで、さまざまなスタイルのお葬式に幅広く対応できるのが特徴で、各宗教・宗派にも対応しているので、臨済宗でお葬式を行うことも可能です。
葬儀会館ティア
引用:葬儀会館ティア公式サイト
「葬儀会館ティア」は、愛知県名古屋市に本社を置く葬儀専門会社です。独自の教育プログラムによって人の心に寄り添える"人財"育成をしており、サービス品質に定評があります。
愛知・岐阜・三重を中心に大阪圏や東京圏でも展開していますが、エリア内でも市町村によっては対応していない地域もあるので、希望する地域でお葬式を行えるかどうかは問い合わせが必要です。
各宗旨宗派の宗教者を紹介することもできるので、臨済宗でのお葬式を希望すれば対応可能となっています。
葬儀のお悩みは「雅葬会」へご相談ください
今回は、臨済宗のお葬式について詳しく解説しました。
臨済宗では15派それぞれでお布施の相場が異なり、金額を決めるのが難しいと言われています。
また、地域やお寺の慣習によってお葬式の決まりごとが異なる場合も多いので、親族・お寺・葬儀社などに詳細を確認することが大切です。
代表的な葬儀社8社でご紹介した「雅葬会」は、地域密着で対応エリアのお寺や慣習を熟知していますので、臨済宗のお葬式を行う場合でも安心して任せることができます。お葬式の疑問や不安・お悩みなどがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。