もし身近な人が亡くなったとき、葬儀をどのようにすればいいか分からないという人も多いでしょう。葬儀というのは、宗派によってやり方が異なります。今回は、天台宗で葬儀をするときに、どのような流れで行えば良いのか、作法の注意点等についてお伝えしていきます。
天台宗とは
そもそも天台宗とは、805年に最澄(さいちょう)により開かれた宗教です。平安中期以降、戦乱・天災・疫病が続いていて、民衆は末法(仏道修行をしても効果がないとされる考え方)の世の中になるのではないかとおびえていました。
そこへ登場したのが、唐(現在の中国)から帰った最澄と空海の二人の留学僧でした。最澄が開いた天台宗と空海が開いた真言宗は、共に鎮護国家としての仏教としての役割を果たすだけでなく、民衆救済の実践仏教の基盤となりました。その基盤は現代につながる日本仏教の源となっています。
天台宗の教え
天台宗の教えの特徴は、四宗融合(法華円教、真言密教、達磨禅法、大乗菩薩戒)による総合仏教であり「全ての人は皆成仏できる」という点です。
奈良時代の仏教では、仏教では声聞(しょうもん)、縁覚(えんがく)、菩薩の3つの乗り物があり、菩薩に乗った人だけが成仏できるという三乗説をとっていました。
しかし最澄は仏の教えは1つであり、声聞・縁覚・菩薩といった区別はなく、全ての人が仏の教えによって救われ、成仏できるという教えを説いたのです。
天台宗の葬儀の流れ
ここまで、天台宗の教えについてお伝えしてきました。ここからは、天台宗の葬儀の流れについて紹介していきます。
天台宗のお通夜
お通夜とは、親族や知人が夜を徹して遺体のそばで過ごし、霊を慰める法要のことです。下記の流れで行われます。
一同着座 | |
導師(僧侶)入堂 | |
読経・焼香 | 喪主、遺族、親戚、弔問客の順に行う。部屋が狭い場合は、回し焼香にすることもある。 |
法話 | 省略されることもある |
導師(僧侶)退室 | |
喪主挨拶 | 故人にかわって感謝の気持ちを伝え、導師の紹介をする。通夜ぶるまいの準備があるときは、その旨を伝える。 |
通夜ぶるまい | 導師が退室されたときは、折詰をお寺に持参するか、「御膳料」を包む。 |
以前は近親者だけが出席するものでしたが、最近は葬儀に出席できない人が出席するようになったこともあって、半通夜といって、午後6時から2、3時間で終わることが多くなっています。
しかし、午前0時を過ぎるまでは交代で誰か起きていて、灯明や線香を絶やさないようにしたほうが良いでしょう。
死亡から葬儀まで2日おく場合は、死亡当日は枕経、2日目に通夜が営まれます。枕経は喪服でなくてもかまいませんが、通夜のときは、遺族は喪服を着用するのが礼儀です。
天台宗の葬儀
葬儀とは、故人の徳をたたえ、霊山浄土へと旅立たせる儀式です。
天台宗では、葬儀(内院式)と告別式(外院式あるいは露路式)の2つを続けて行います。葬儀では読経があり、その間に故人には「戒名」が授けられます。
このため、戒名とは亡くなったときにつけられるものだと思っている人も多いでしょう。しかし本来は、仏の教えに帰依し、仏教徒として守るべき戒を守ることを誓った者に授けられます。なので、在家・出家を問わず、入信のはじめに授戒の儀式を受け、法号(戒名)を授かることができるのです。
可能であれば、戒名は生前に受けておくのが良いでしょう。
天台宗の告別式
告別式とは、故人の友人や知人が最後のお別れをする儀式です。葬儀と告別式は本来違う意味の儀式であるため、別々に行っていました。しかし近年では、葬儀と告別式を兼ねて行うことが多いです。
葬儀と告別式の進行例については、下記のようになります。
一同着座 | 遺族は一般の会葬者より早めに席についておく。 |
導師(僧侶)入堂 | 会葬者は正座か、イス席の場合は起立して導師を迎える。 |
開式の辞 | |
読経 | |
弔辞拝受 | |
弔電代読 | 読み終えた弔電と弔辞は、必ず祭壇に供える。 |
読経 | |
焼香 | 喪主・遺族は会葬者の方を向いて座り直し、1人1人に黙礼する。 |
導師(僧侶)退堂 | |
喪主挨拶 | 会葬者に参列、焼香のお礼を述べる。 |
閉式の辞 |
告別式では、下炬(あこ)を行います。下炬とは、導師が松明(たいまつ)を持ち、空中に梵字(神仏を1字で現す文字)と円を描いたあと、遺体を焼く燃料に火をつける儀式のことです。実際に火をつけることはなく、火葬の前に行う1つの儀式とされています。
天台宗の葬儀の作法とは
ここまで、天台宗の葬儀の流れについてお伝えしてきました。ここからは、天台宗の葬儀において、作法の特徴や注意点について説明していきます。
天台宗の焼香
天台宗の焼香の作法は、通夜も葬儀も変わらないです。僧侶から合図があったら、喪主を先頭に血縁の順番に焼香を行います。親族のあとは、知人、一般会葬者となります。
焼香の手順としては、下記のようになります。
1.数珠を左手に持って祭壇の前に進み、草書に一礼、仏前で合掌礼拝する。
2.抹香(まっこう、数種類の香木を刻んで調合した焼香)を右手の親指と人差し指で軽くつまむ。
3.左手を添えて、抹香を額の前に軽くささげる。
4.香炉(こうろ、線香や抹香を焚くための道具)を入れる。3回焼香するときは、2から4を繰り返す。
5.もう1度、仏前で合掌礼拝する。
6.僧侶に一礼し、自分の席に静かに戻る。
焼香の回数については、仏・法・僧の三宝に供養するという意味から、3回ともいわれていますが、天台宗では特に回数は定められていません。あわただしく3回するよりも、心を込めて1回するなど、状況に応じて対応しましょう。
天台宗の数珠
天台宗では、平玉と呼ばれる薄い円形の珠のものを用います。
数珠のかけ方は、通常は左手首に二重にしてかけておきます。合掌するときは左手の親指と人差し指の間に挟み、房を下に垂らします。持つときも左手で持ち、房を下に垂らすようにします。
葬儀や法事のときにあわてて人に借りるという人もいるかと思います。しかし、数珠というのは宗派によって作りが異なります。自分専用の数珠を持っておくと良いでしょう。
天台宗のお布施
ここからは、天台宗のお布施について紹介していきます。お布施とは、戒名授与や読経のお礼として、僧侶に渡すお金のことです。お布施の相場や包み方等について、詳しく説明していきます。
お布施の相場
お布施の金銭的な決まりはなく、地域によって異なります。お寺に相談しても「お気持ちでかまいません」と返ってくる場合が多いです。
相場が分からない場合は、お葬式を経験したことのある親戚や葬儀社に相談して決めましょう。
包み方
お布施の包み方は、正式には半紙で包んで仏事用ののしをつけますが、市販ののし袋でもかまいません。その場合でも、紙幣をじかに袋に入れるのではなく、半紙で包んでから入れるようにします。
上書きは「御布施」とし、その下に喪主の名前を書きます。水引(のし袋につける紐)は黒白を使いましょう。
渡し方
お布施は、もともと葬儀を終えてからお寺に出向いて、供物などと一緒に差し上げるものです。しかし最近では、葬儀が終了し僧侶が帰られるときに差し上げるのが一般的になっています。あくまでも略式なので「本来ならお礼に参上しなければなりませんが、おことづけしてまことに失礼いたします」と挨拶を添えて、渡すようにしましょう。
またお布施を渡すとき、手渡しではいけません。小型の切手盆か、あるいは盆にのせて、住職からみて上書きが正面になるように差し出しましょう。
戒名料の相場
戒名料の相場も、地域によって様々です。一般的には20万から50万程度とされています。戒名料をどの位渡すと良いのか分からないときも、葬儀経験のある親戚や葬儀社に相談してみましょう。
天台宗の葬儀で唱えるお経
天台宗で唱えるお経として、下記の3つがあります。
法華経(ほけきょう) | 天台宗の根本経典。お釈迦様の慈悲によって、人々が永遠に救われることが説かれている。
全8巻28品からなり、内容は『法華経』こそが究極の教典であると書かれた迹門(しゃくもん)と、本門とに分かれている。 |
阿弥陀経(あみだきょう) | 内容は下記の4つに大きく分けられている。
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般若心経(はんにゃしんぎょう) | 仏様の説いた宗教的な真実の知恵で、理想の世界に到達するための本質、仏教緒宗の教えが全て示されている。 |
天台宗の葬儀で使う道具
ここからは、天台宗の葬儀で使う道具について紹介していきます。天台宗では、下記の道具が使われます。
- 大徳寺りん
- 木魚
- 妙鉢
- 懺法太鼓(せんぼうだいこ)
- 銅鑼(どら)
それぞれどんな道具なのか、詳しく説明していきます。
大徳寺りん
小磬(しょうけい)とも呼ばれます。おつとめするときに必ず叩く道具で、澄んでいつまでも鳴り響く音色が邪念を払ってくれるといわれています。家庭用であれば、5寸(直径15センチ)や6寸(直径18センチ)の物が多く販売されています。値段も種類によって差があるので、購入するときは、自分の経済状況や部屋の広さを把握してから購入しましょう。
また大徳寺りんは真鍮(しんちゅう)でできていることが多く、長い間掃除をしないと錆びてしまいます。塩分を嫌うので、手入れをするときは、手で触れずに専用の磨き油で汚れを取るようにしましょう。
木魚
読経や念仏の際に声の調和やリズムをとるのに用います。「木魚」という名のように、元々は魚の形をした板で「魚板(ぎょばん)」と呼ばれていました。この魚板が変形し、木魚となったといわれています。
木魚を自宅に置くときは床に直接置かず「ふとん」と呼ばれるクッションのような物の上に置きましょう。
妙鉢
妙鉢とは、法要や葬儀の際に使われるシンバルのような仏具です。法要などの開始や終了を伝える役割を持っています。
使い方としては、シンバルのように鳴らした後に、擦り合わせて妙鉢が擦れる音を長く響かせます。
一般家庭にはあまり置かれていないことが多いです。というのも、妙鉢は直径24センチから33センチと比較的大きく、置く場所を取ってしまうからです。購入するときは、自宅に置くスペースがあるか確認してからにしましょう。
懺法太鼓
読経のときに使用する小型の太鼓です。無地の物もありますが、竜が描かれている物もあります。直径30センチから36センチ程で、値段も5万円程度します。懺法太鼓も一般家庭に置かれていることは少なく、寺院で見かけることが多いです。
銅鑼
銅鑼も寺院で用いられる道具の1つです。主に法要等で妙鉢に合わせて打ち鳴らします。大きさは27センチから36センチ程度で、価格も4万円から6万円程度とされています。
銅鑼は妙鉢とセットで置かれることが多いです。その為仏壇に加えて銅鑼と妙鉢を自宅に置くとなると、ある程度の場所と、お金が必要になります。
葬式や法事の際、必ず必要な物ではないので、購入する前に検討することをおすすめします。
天台宗の葬儀に参列するときのマナー
ここまで、天台宗の葬儀で使う道具についてお伝えしてきました。ここからは、天台宗の葬儀に参列するときのマナーについて紹介していきます。
香典や服装など、どんな点に気をつけると良いのか、詳しく説明していきます。
香典
香典は、故人の霊前に備える金品のことですが、遺族を経済的に助ける目的もあります。市販の香典袋の場合、水引は黒白になります。上書きは「御霊前」「御香典」「御香資」「御香料」のいずれかを使いましょう。
香典の金額は、故人と近い関係にあるほど大きくなります。下記の表が目安の金額となっています。
親 | 5万から10万円 |
親以外の親族 | 1万から5万円 |
友人や仕事の関係者 | 5000円から1万円 |
金額については決まりはありませんが、「四」や「苦」、偶数がつく数字は避けたほうがよいといわれています。その為3000円、5000円、1万円、3万円、5万円がよく使われます。
香典はそのまま持参せず、不祝儀用の袱紗(ふくさ)か地味な風呂敷に包んで持参するようにします。また、香典には住所、氏名、金額を書くのを忘れないようにしましょう。
服装
葬儀では喪服を着ることがマナーですが、喪服といっても下記の3種類があります。
喪服の名称 | 用途 | 男性 | 女性 |
正喪服 | 最も格調が高い喪服。 | モーニングコートに、黒とグレーの縦縞のズボン | 光沢のない黒無地のワンピース、もしくはアンサンブル(ジャケットとワンピースのセットアップになっているもの)やスーツといった黒のフォーマルドレス |
準喪服 | お通夜や葬儀、告別式など、どのような場面でも着用できる | ブラックスーツ | 黒のスーツ、アンサンブル、ワンピースといったフォーマルドレス。
正喪服との区別はほとんどないが、デザインや生地の素材などで許容される範囲が緩くなっている |
略礼服
(平服) |
急な弔問や、三回忌以降の法要で参列者が着用するもの。 | 濃紺や濃いグレーのダークスーツ | ダークスーツ |
遺族の服装としては、正喪服や準喪服を着用するのがよいでしょう。また喪主や遺族はひと目で分かるように喪章やリボンをつけることがあります。
天台宗の葬儀に対応してくれる葬儀社を紹介
ここまで、天台宗の葬儀についてお伝えしてきました。ここからは、天台宗の葬儀に対応してくれる葬儀社を8社紹介していきます。
それぞれの葬儀社の特徴を交えて、説明していきます。
小さなお葬式
引用:小さなお葬式公式サイト
対応可能な葬儀の種類 |
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料金プラン |
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小さなお葬式は、日本全国に対応している葬儀会社です。またお寺との付き合いがないという人の為に、寺院を手配してくれるというサービスも行っています。
天台宗を始め、様々な宗派に対応してくれる葬儀社です。天台宗の葬儀があまり分からないという人でも、安心して任せられる葬儀社の1つです。
東京葬儀
引用:東京葬儀公式サイト
対応可能な葬儀の種類 |
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料金プラン |
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東京葬儀は対応エリアが一部の関東圏のみと狭いですが、少数精鋭の強みを活かし、丁寧なサービスを行います。
サービス内容の1つとして「仏式セット」があります。木魚等の宗教道具やお参り道具の一式を貸し出すサービスを行っているので、「道具を揃える時間がない」という人でも、東京葬儀に頼めば一式用意してくれます。
よりそうお葬式
引用:よりそうお葬式公式サイト
対応可能な葬儀の種類 |
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料金プラン |
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よりそうお葬式でも、寺院手配のサービスを行っています。僧侶の手配費用は、下記のようになります。
葬儀の種類 | 料金 | 内容 |
よりそう火葬式 | 5万5千円 | ・火葬場での読経
・一般的な戒名 |
よりそう家族葬(一日プラン) | 8万5千円 | ・告別式・火葬場での読経
・一般的な戒名 |
よりそう家族葬
(ゆったり二日プラン、二日プラン) |
16万円 | ・お葬式・告別式・火葬場での読経
・一般的な戒名 |
料金には戒名授与代やお心づけ(お布施)の料金が含まれているので、どの位お金を渡せば良いのか分からないという心配が軽減されます。
やさしいお葬式
引用:やさしいお葬式公式サイト
対応可能な葬儀の種類 |
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料金プラン |
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やさしいお葬式は、日本全国に展開している葬儀社の1つです。特徴としては「ホームページで葬儀場を検索できる」という点です。
葬儀場がどの宗教や宗派に対応してくれるのかといった情報だけでなく、葬儀のプランや葬儀場の特徴(バリアフリーかどうか)、口コミも閲覧できるようになります。
どの葬儀場を選べば良いか分からないという人に、おすすめです。
イオンのお葬式
引用:イオンのお葬式公式サイト
対応可能な葬儀の種類 |
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料金プラン |
→9万円
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イオンのお葬式でも、お寺との付き合いがない遺族の為に、寺院の手配を行っています。金額の目安としては、下記のようになります。
葬儀プラン | 料金 | お勤め日数 |
火葬式 | 4万5千円 | 1日 |
一日葬 | 7万5千円 | 1日 |
家族葬 | 15万円 | 2日 |
一般葬 | 15万円 | 2日 |
日比谷花壇のお葬式
対応可能な葬儀の種類 |
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料金プラン |
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⽇⽐⾕花壇のお葬式では、花を使って故人をお見送りするという特徴があります。火葬花や入館花、喪主用のコサージュも貸し出してくれるので、花を使って綺麗に送り出したいという人には、おすすめです。
葬儀会館ティア
引用:葬儀会館ティア公式サイト
対応可能な葬儀の種類 |
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料金プラン | 地域によって異なります。 |
葬儀会館ティアは、名古屋を中心に展開している葬儀社です。ティアでは寺院と付き合いがない人向けに、寺院を手配してくれるサービスも行っています。
また一般葬のプランの中には、通夜や会葬の礼状を作成してくれるサービスを行っているので、参列者が多くて礼状を作るのが大変という人には、良いサービスです。
雅葬会
引用:雅葬会
対応可能な葬儀の種類 |
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料金プラン |
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雅葬会のホームページでは、斎場や寺院を検索できるのが特徴です。葬儀の規模(大型葬まで可能なのかどうか)や、駐車場の台数、また料金についても記載されています。
駐車場の台数を把握しておくことで、参列者へ葬儀の案内をするときに「駐車できる台数が少ないので、ご注意ください」という旨を伝えることができます。
葬儀のお悩みは「雅葬会」へご相談ください
この記事では、天台宗のお葬式についてお伝えしてきました。葬儀というのは、突然やってくることが多いです。身近な人がなくなり、天台宗で葬儀をしようと思っても、葬儀の流れや作法が分からないということがあるでしょう。
そのときは「雅葬会」へご相談ください。雅葬会では、厚生労働省が認定した葬祭ディレクターが在籍しています。高度な葬祭知識と施工技術を兼ね揃えたプロが、心残りのない葬儀を提供させていただきます。気になった方は、是非資料請求し、雅葬会のことを知っていただけると幸いです。