近年、不安定な社会情勢の中で、国の生活保護制度を利用する人が増えて続けています。全国では、214万人もの人が受給しているそうです。
もし、生活保護を受けている方がお亡くなりになったときにお葬式はどのようにすれば良いのでしょうか?
生活保護を受給するには、銀行預金・車(移動手段が他にない場合を除きます)・貴金属など財産とみなされるものはすべて手放さなくてはいけません。預金が手元にない場合、葬儀にかかる費用はどう工面すれば良いでしょうか?
また生活保護の受給にあたっては、収入のある家族との同居は認められていません。必然的に、高齢で生活保護を受けている方は、単身や夫婦だけで生活をされていることが多く、亡くなる前にお葬式について相談しておくことも難しいことがあるようです。
そこで今回は、親族で生活保護を受けている方が亡くなった場合に、お葬式はどのようにすれば良いのか、紹介していきます。
葬祭扶助の利用
結論からいうと、お金が全くない生活保護受給の方でも、葬儀を行うことはできます。
自治体による「葬祭扶助」という制度を利用して葬儀を行うことができるのです。この場合に非常に大切になるのが「死亡届出人」です。
葬祭扶助を受けるには、亡くなった人だけでなく、死亡届人が「生活保護を受ける同居家族」である必要があるのです。
慣れない手続きの中で、普段は一緒に暮らしていない収入のある親族が「死亡届」を出してしまうと、葬祭扶助は受けることができなくなります。
葬儀会社との見積もり段階で、故人が生活保護受給者であることがわかり、死亡届を出す前に届人を故人の息子から同居の妻(生活保護受給者)に変更したケースもあります。
もし、葬祭扶助の申請を考えている場合には、死亡届人を出す人に注意してください。また自分で葬儀費用を立て替えてしまったあとは、支払い能力があるとみなされますので、葬(火葬)の前に葬儀会社の見積もりとともに申請する必要があります。
前述した通り、死亡届人は「生活保護を受ける同居家族」である必要があるので、夫婦二人で暮らす生活保護受給者の場合に、二人のうち後に亡くなる人は葬祭扶助を受けられないことになります。
直葬とは?
葬祭扶助を利用した場合に受け取れる金額は以下の表になります。
大人 | 206,000円以内 |
子供 | 164,800円以内 |
この金額では、一般によくある形のお通夜やお葬式を執り行うことはできません。一般的な葬儀にかかる費用は合計でおよそ195万円といわれています。精進落としと呼ばれる葬儀後の食事費用を差し引いても、平均およそ120万円となります。
これと比較して、葬祭扶助で得られる金額では、かなり簡素な葬儀となります。
葬祭扶助の範囲内で行う葬儀は「直葬(ちょくそう)」といわれる形のものです。
直葬では、ごく親しい親族だけで火葬のみを行う葬儀です。「火葬式(かそうしき)」と呼ばれることもあります。一般のお葬式の「焼き場」の部分だけといえばわかりやすいかもしれません。
直葬には、参列者や僧侶を招いてのお通夜、告別式、精進落としの類はすべて含まれません。火葬だけになると、寂しい気持ちになるかもしれませんが、実は生活保護受給の有無にかかわらず、6人に1人は直葬の形式を選んでいるともいわれています。
故人を偲ぶ気持ちさえあれば、形にこだわる必要はないのかもしれません。
葬祭扶助に自己資金をプラスすることはできるの?
生活保護受給の方が亡くなった場合に、残された家族として葬祭扶助を受け取った上で足りない分を出して、一般的な葬儀を出したいと考える人もいるかもしれません。
法律的には、葬祭扶助を受け取った葬儀に対して、自己資金を足すことは認められていません。しかし、葬儀会社によっては、この要望に応えているところも存在します。
方法としては直葬以外にかかる費用を全くの別料金として会計する形を取るのです。
ひとりの故人に対して配偶者と子どもが2回別の葬儀を行ったすれば、理屈の上では成立します。特殊なケースなので、葬儀会社との事前の打ち合わせが必要不可欠です。
さらにこの場合にも、直葬のみの場合と同じように法律で定められた「生活保護を受ける同居の家族」が死亡届人となり、事前に葬祭扶助の限度額を超えない見積もりも出した上で自治体に申請をする必要があります。
法律違反にならないか心配になるぐらいでしたら、費用を抑えたり、支払いを分割にして、できる範囲の一般葬を検討する方が良いでしょう。
葬祭扶助を受け取れなかった場合
親族が、葬祭扶助の制度についてよく知らず、葬祭扶助を受け取れなかったということもあるかもしれません。
そんな場合には、国民健康保険(後期高齢者保険からの)葬祭費用として、5万円の支給の対象となることがあります。自治体の担当窓口で確認をしてみましょう。この場合に、第三者が総裁費用を支払うときには対象外となりますので、注意してください。
現実的にこの制度を利用するとしたら、葬祭扶助を忘れてしまった場合に、直葬の費用をなんとか工面し国民健康保険からの5万円を足しにするというパターンが考えられます。
まとめ
生活保護を受ける方の葬儀には、資金に応じて直葬、一般葬どちらも選ぶことができます。ただし、葬祭扶助の制度を利用するには「死亡届人」には注意が必要です。
葬祭扶助の制度を利用するのかどうか、どんなお葬式にしたいかなど、事前に決めておくことが大切です。悔いなく亡くなった家族を見送ることができるよう、葬祭扶助のことや葬儀にかかる費用のことも頭の片隅に入れておいてみることも大切です。