日蓮宗の葬儀とは。流れとマナーをご紹介

仏教の葬儀は、基本的には故人の宗派に合わせて葬儀が執り行われます。宗派によっては「流れ」や「作法」が異なることがありますので気をつけなければなりません。

数ある仏教の宗派の中で、代表的な宗派の葬儀の特徴やポイントを知っておくだけでも、戸惑うことなく、より心のこもった対応ができるでしょう。

そこで今回は、特に「日蓮宗(にちれんしゅう)」について、その教えや題目(だいもく)の基礎知識、葬儀の特徴や流れ、焼香の礼儀作法、香典、参列者としてのマナーをご紹介したいと思います。

 

日蓮宗の葬儀はどのようなもの?

日蓮宗の葬儀は、故人を死後に「霊山浄土(りょうぜんじょうど)」へと旅立たせるための儀式という意味合いがあります。

葬儀の流れの中では、いくつかの他の宗派ではあまり見られない「儀式」や「道具」などもあり、もし日蓮宗の葬儀に参列する機会があれば、それは貴重な体験となるかもしれません。

また日蓮宗では、香典の表書きのルールや焼香の仕方、戒名についても少々違いがありますので、順番に詳しく見ていきましょう。

 

日蓮宗とは

日蓮宗は鎌倉時代の僧侶「日蓮聖人(にちれんしょうにん)」によって開かれ、お釈迦さまの教えのなかでも「法華経(ほけきょう)」を一心に信じ帰依するという宗派です。

法華経は、今を生きる知恵と術が説かれており、「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」の題目を唱えることで、現世での幸せを見いだし、死後には「霊山浄土」で成仏(仏になること)を願うものです。

平成28年版「宗教年鑑」によると、日蓮宗寺院は全国でおよそ4,600ヵ寺に及び、約3,500,000人の信者がいるとされています。

 

「南無妙法蓮華経」を重視している

日蓮宗では「法華経」こそが世の中を救う絶対最高の教えであるとし、法華経すべての功徳(くどく)が込められているという「南無妙法蓮華経」の7文字の題目を唱えることが、何よりも重要な修行であるとされています。

この7文字の題目を繰り返し唱えることで法華経への信仰の深さを示すことができ、死後には「霊山浄土」で「釈迦牟尼仏(しゃかむにぶつ)」にお会いし、成仏できるとされることから、葬儀の場でもこの「南無妙法蓮華経」の題目が頻繁に唱えられます。

 

日蓮宗の葬儀の特徴

日蓮宗の葬儀では「南無妙法蓮華経」の題目を式中に参列者全員で合唱することや、シンバルとよく似た「妙鉢(みょうばち)」や、カンカンと高めの音のする「木柾(もくしょう)」が木魚(もくぎょ)の代わりに使われるなど、他の宗派に比べて鳴り物が多く、にぎやかに感じられるのも特徴です。

また、日蓮宗では戒名を法号と呼びます。法号は信仰に入った証として授けられるものなので本来は生前に授けられるべきものですが、現在では亡くなってから授かるケースが多いようです。

 

日蓮宗の葬儀の流れ

日蓮宗の葬儀には他の宗派とは異なる特徴があることをお話ししましたが、そのひとつひとつには「日蓮聖人」の教えに基づいた「法華経」の精神が息づいていて、意味深いものとなっています。

ここからは、その「儀式」の流れの中でも特徴的である部分について、その独特なアクションや使われる道具などにも触れながら、詳しくご紹介していきましょう。

 

道場偈(どうじょうげ)

日蓮宗の葬儀の流れとしては、まず「道場偈(どうじょうげ)」という声明曲から始まります。これは、諸仏諸尊(しょぶつしょそん)を招き、お迎えするためのものです。

諸仏諸尊とは、如来・菩薩・明王といった仏の総称で、「尊」は三尊・世尊・本尊というように仏に対する尊称で用いられます。

そして「三宝礼(さんぽうれい)」へと続きます。「三宝礼」は、立ったり座ったりして仏法僧(仏・その教えである法・教えを説く僧)の三宝を礼拝するものです。

「三宝礼」は「起居礼(きこらい)」とも呼ばれます。

 

勧請(かんじょう)

続いて「勧請(かんじょう)」です。

「勧請」とは、文字通り「勧め請う」という意味で、「釈迦牟尼仏(しゃかむにぶつ)」や「四菩薩(しぼさつ)」「諸仏諸尊」「日蓮聖人」に現れ出でることを請い、お迎えする儀式です。

また、仏に教えを請い、生きとし生けるものすべてをお救いくださるよう請願することを「勧請」といいます。

 

開経偈(かいきょうげ)・読経・咒讃鐃鈸(しゅさんにゅうはち)

続く「開経偈」は、どの宗派でも読経の前に聞くことができますが、日蓮宗では法華経の功徳(くどく)を讃え、お経を読むことの喜びと感謝を仏様にお伝えする文章となっています。

次に「読経(どっきょう)」ですが、日蓮宗では、経典である法華経の、肝要とされている釈迦の教え「諸品(しょほん)」を拝読します。

一般的に行われる仏式葬儀の場合は、この「読経」の部分で宗派それぞれの経典読経が異なります。

そして「咒讃鐃鈸」は声明曲のひとつで、器楽の演奏にのせて節をつけ、諸仏を唄い讃える供養です。

 

開棺→引導

続いて行われる「開棺(かいかん)」から「引導(いんどう)」のアクションは、葬儀の中でも特に特徴的です。

「開棺」は、僧侶が「中啓(ちゅうけい)」と呼ばれる半分開いたハリセンのような扇で棺を軽く3回打ち鳴らします。

「引導」は、「払子(ほっす)」という高級なハタキのような仏具を振りながら、法華経の大切さや故人の功徳を誉めるような内容が記された「引導文」を読み、故人が安心してあの世の霊山に行くことができるようにし、故人を仏様に引き合わせる儀式です。

「引導を渡す」の語源となっていますが、宗派によって「引導」は異なります。

 

焼香・祖訓・唱題

引導が終わったら焼香が始まりますが、その間には、日蓮聖人の遺文である「祖訓(そくん)」を拝読します。

「祖訓」とは、家庭では家訓にあたるもので、先人の教えや教訓を意味するものです。

そして「南無妙法蓮華経」の題目を唱える「唱題(しょうだい)」が行われます。この唱題は、日蓮宗では最も重要な修行とされていますので、葬儀でも「南無妙法蓮華経」の題目を唱えるタイミングには、参列者も合掌をしながら一緒に唱えるようにするとよいでしょう。

 

宝塔偈・回向

「宝塔偈(ほうとうげ)」では、法華経の功徳を讃える偈文(げもん)を唱えます。

偈文とは、韻文(いんぶん)を持つ詩歌・詩句のことで、一定の文字や音のリズムがある文章のことをいいます。

その後、「回向/廻向(えこう)」が行われます。回向とは、僧侶や自身が修めた善根(ぜんこん)の功徳の結果が故人に廻らされて、悟りの一助となり、浄土への道を開き、故人の安らかな成仏を願うものとなるのです。

 

四誓・三帰・奉送

そして終盤には、「四誓(しせい)」により、人々を救うための誓いの言葉を唱えます。「四誓」とは、お経の中に書かれている四つの誓いのことです。

その後「三帰(さんき)」で三宝に帰依して仏道に精進することを誓います。

最後に、身分の高い人をお見送りする「奉送(ほうそう)」という儀式により、招いた諸仏諸尊をお送りし、閉式となります。

 

日蓮宗の葬儀のマナー・注意点

ここからは参列者として知っておきたいマナーのポイントをご紹介しましょう。

日蓮宗の葬儀では、焼香の仕方、数珠の形状、不祝儀袋の表書きなどに、他の宗派とは少し異なる礼儀作法やルールがあります。

この特徴を何も知らないで参列するよりは、予備知識として少し知っておくだけでも、その場で戸惑うことなく、よりスムーズに丁寧な対応ができて安心ですよ。

 

焼香の作法

仏教の葬儀では宗派によって焼香の回数や作法が少し異なりますので、違いを知っておきましょう。

日蓮宗の場合、導師や僧侶は3回ですが、参列者の焼香は1回が基本です。

そして、親指と人差し指2本で摘まむのが正式で、摘まんだ「抹香(まっこう)」を額(ひたい)の高さまで掲げて「押しを頂く」というのが基本型です。

自分の宗派の作法で焼香をしても失礼には値しませんが、相手方の作法に合わせることで、より丁寧に弔意を表せることでしょう。

 

日蓮宗で使用する数珠について

葬儀の際に持参する数珠は宗派によって形が異なりますが、基本的には108個の珠がついているものが正式です。

日蓮宗の数珠は、片側に2本、もう片側に3本の房がついている形状が一般的です。

もし喪主や遺族側として日蓮宗の葬儀を行う場合は、正式な日蓮宗の数珠を購入することをおすすめしますが、一般会葬者として参列する場合は、自身の宗派の数珠で参列してもマナー違反ではありませんので、買い直す必要はありません。

 

不祝儀袋の表書きのマナー

香典のマナーの一つとして、香典を入れる不祝儀袋の表書きの仕方があります。

仏教の場合でも宗派によりますが、日蓮宗では四十九日までの不祝儀袋の表書きは「御霊前」と書き、四十九日後は「御仏前」となります。

これは、亡くなられた方は四十九日を境に成仏されるという日蓮宗の考え方によるもので、「霊」から「仏」になるということを表します。

 

日蓮宗の葬儀のご相談は「雅葬会」へ

今回お伝えしたように、日蓮宗の葬儀は開祖「日蓮聖人」の教えに基づいた「法華経」の精神が随所に息づいています。

独特な道具を用いたアクションや、鳴り物の音色などにも意識を向けて参列されると、宗派による葬儀の違いや奥深さを感じられることでしょう。

特に「南無妙法蓮華経」の題目は重要とされていますので、日蓮宗の葬儀に参列された際には、ぜひ一緒に唱えたいものです。そして参列のマナーを理解して、心を込めて故人を見送りたいですね。

また、雅葬会は各宗派のご希望にあった寺院をご紹介しています。お布施や法号の料金も公開しているので安心ですよ。

日蓮宗の葬儀を行いたいけど菩提寺がない、どう調べればいいのか分からないという方は、ぜひお気軽にご相談ください。

 

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